水産学部学生流出問題
水産学部学生流出問題(すいさんがくぶがくせいりゅうしゅつもんだい)とは、その名の通り学生が大学院進学を機に学部外へ流出する問題である。特に学部生から大学院への進学時に水産科学院に進学せず、他大学や北大内のその他研究科に進学する傾向が顕著に見られる。他大学への進学先として、北大以外の旧帝国大や、大都市の大学へ進学する事例が多い。ある学科では、23年度卒業生の内20%が水産科学院以外の大学院に流出したらしい。また、200人近い水産学部卒業生の内、毎年5人近くは東京大学大学院に進学するようであり、水産学部は名門進学校さながらの進学実績を呈している。この問題に正面から対処するためには、卒業生の動向や学生が大学に求める要素などについてより詳細な調査が求められる。
背景編集
学生が函館を離れる理由には、立地や環境面など様々な要因が考えられる。
- 函館からの逃避 札幌での便利な生活を経験した学生たちは、何もない不便な函館に耐えきれず、QOL向上を求めて函館を脱出する。
- 就活環境の欠失 函館では就活イベントへの参加や就活団体からの支援を受けることが難しいため、近年早期化する就活に対応するために函館を離れる。
- 学びたい内容とのギャップ 学部教育を通して知識を身につけていく中で、自分が本当にしたいことが水産の研究内容にないことに気づき、理想の研究関係を求めて他大へ進学する。
- キャリアアップ(学歴ロンダ) 北大水産学部には後期入試や総理での移行失敗など不本意ながらたどり着いた学生も多いため、最終学歴を粉飾するために、より高偏差値帯(かつ知名度の高い)大学の大学院へと進学する。
影響編集
この問題は、水産学部にとどまらず、大学のある函館市にとっても憂慮すべき課題である。
- 優秀な人材の流出 せっかく学部教育で水産学という全国でも稀にみる教育内容を教え込んだとしても、その人材が研究室で水産科学の研究を深めることなく外部へと流出してしまう。
- 函館へのマイナスイメージの定着 函館を離れる人には函館に対する苦い思い出を抱えた人間も多く、将来函館へUターンし活躍するなどの可能性を潰してしまう。
対策編集
水産学部を離れる人間の数を抑えるためには、単に水産学部、ひいては函館の魅力を向上させるに他ならない。水産学部としては、大学院進学後のキャリアプランを学生に提示し、就活や研究活動に対する様々な不安を払拭する施作を展開する必要がある。また、函館市は大学生が休日を楽しめるような商業施設の誘致、街づくりをしなければ、水産学部に関わらず函館全体から大学生が消えていくシナリオが現実味を帯びつつある。 そもそも水産学部が函館に移転したのは1935年に当時の亀田郡が土地を提供したことにはじまり、当時の函館は遠洋漁業の要所として日本の水産業の中心として栄えていた。しかし、排他的経済水域の制定以降、函館は遠洋漁業基地としての役割を終え、新たな産業を獲得することなく現在に至るまで衰退の一途を辿っている。一昔前までであれば水産関連企業と水産学部が協働し共に発展することができたかもしれないが、急速に人口減少が進み近いうちに20万人を割ると予想される自治体にキャンパスを設置していても、新たなシナジーを創出することは期待できない。水産学部の歴史の中で幾度となく議論されてきたことではあるが、水産学部札幌移転論について今一度真剣に考える時期になりつつあるのかもしれない。